
成長出来る環境って何?
いや~新卒では、いや中途採用でも、言い尽くされた話かもしれませんね。
僕自身この点に想いがあり、学生とよく話をしているので、参考として改めて整理してみます。
かなり長い文章になったので、先に結論を3行で書いておきます。
・内部環境(自分)と外部環境(テクノロジー変化)を見る必要がある
・小規模(15~50名)かつ急成長(前年比150%以上成長)していて新規事業をちゃんとやっている企業がいいのでは?
・テクノロジー変化の代表格であるAIをおさえる必要があるのでは?
ということで以下記載していきます。
目次
成長環境の構成要素を考える
今の成長環境の構成要素を考えると、
観点としては2つあります。
ビジネスとしてよく内部環境(自社)、
外部環境(市場、競合、政府、経済)の分析を行いますが、
それを個人に当てはめて考えてみると、
1.内部環境として必要なスキルを獲得する
2.外部環境変化を予測し、中長期で競争力のある知見、経験を得る
の2つに分けられます。
以下、一つずつ説明していきますね。
1.内部環境として必要なスキルを獲得する
ここでの議論は理系のスペシャリストは除外しつつ、
文系総合職における成長について書いています。
文系総合職として新卒で会社に入社し、何らかの業務から始めて、
その後マネージャーとして一定の成果を出せるようになるまでをマイルストーンとすると、
そのマイルストーンに最速最短で辿り着ける環境を、ここでは1における成長環境と定義します。
当該マイルストーンに求められるスキルはざっくりとは以下かなと考えています。
- (1)業務遂行における基本スキル:論理的思考、行動力、創造性、協調性、コミュニケーション等
- (2)業務特有の専門性:営業、企画、マーケティング、会計、ファイナンス等の業務の専門性
- (3)マネジメントにおける基本スキル:基礎的、専門的スキルを踏まえた上での意思決定における判断力とリーダーシップ
- (4)マネジメントに関わる専門性:機能型の長(営業部長とか)でのマネジメントは引き続き当該機能の専門性が問われるが、プロジェクト型の長(新規事業部長とか)においてはプロジェクト全般を機能させる広い知見(ヒト・モノ・カネ・情報)が求められる
次に、そのようなスキルや専門性の獲得可能性について、
会社に依存せず個人の努力で獲得しやすいかどうか、
入社した会社という環境以外で獲得代替可能性(書籍を読む、他業界や職種に就いた知人に聞く、勉強会やセミナーに参加する、ビジネススクールに通う)等があるかどうか、
という観点で評価すると、感覚的には以下のような評価が出来るかなと。
(1)業務遂行における基本スキル →○
(2)業務特有の専門性 →基本○だけど、△の業務も
(3)マネジメントにおける基本スキル →×
(4)マネジメントに関わる専門性 →△
※評価軸
○:比較的自己努力で獲得しやすい、会社以外で代替可能性がある
△:比較的環境を選ぶ
×:かなり環境を選ぶ
通常、文系総合職は、入社後営業から始まると思うので、
その場合、(3)(4)、特に(3)を獲得出来る環境を選ばなければ、
(3)のスキルを獲得ができないということになります。
では(3)を獲得出来る成長環境の会社とはどういうところなのか?
判断力を獲得出来る成長環境の要素
(3)マネジメントにおける基本スキルについて、
判断力とリーダーシップという記載をしましたが、
特に判断力というものを獲得するためには、
新卒時入社する環境をかなり選ぶのでは?と僕は思っています。
ではどういう環境であればよいのか?
以下の3要素が必要ではないかと思っています。
1,規模が小さいこと
→だいたい15名~50名くらいで、そもそもこれからポジションを作る規模であること
2,既存事業が急成長していること
→スタートアップやベンチャーと呼ばれる企業規模では前年比売上高110%とか120%程度では全然足りない。自社が位置している市場がそのものが伸びているところでビジネスをしている前提がある以上、感覚的にはざっくりと150%以上成長して初めて急成長と言えるかなと。急成長していることで、新規事業を起こす体力が出来、また既存事業のポジションもどんどん増える
3,新規事業に積極的かつ新規事業立ち上げを謳っているだけなくちゃんと立上げを行った実績があること
→ポジションが増える(事業が2つになれば単純に言うと機能別ポジション2倍ということになる)
そもそも、判断力を養うためには、単に仕事に裁量があるだけではなく、
実際に意思決定を任されるポジションに就くことが大前提であって、
その中で、自分で必死に考え、もがきながら、実際にお金が動く意思決定をしていく経験をする必要があると思っていて、
その経験を何度も何度もすることで判断力が磨かれると思っています。
上に挙げた3つの要素は、ポジションに就くことが出来る確率が必然的に上がる要素を記載しています。
大企業は当然のことながら、おおよそ社員50名を超えて成長している会社は、
基本的に組織化がされ、ミドルのポジションが埋まっているからこそ、その規模を超えて成長出来ているという構造的な話から、
50名を超える組織はポジションがそもそも埋まっているし、
仮に50名未満の小さい企業であっても、既存事業があまり成長していなければ、
ポジションを作らなかったり、ポジションが増えないですねと。
また、新規事業をやらずに1つの事業だけでガーと伸びてるところは、
機能的な面でのポジションは増えやすい(マーケティング、人事、広報、会計、ファイナンス等仕事が細分化されることで専門特化のポジションが増えていく)けれども、
プロジェクト型の面でポジションは増えない(単一事業で事業部長は2人も3人も要らない)ので、
新規事業をやらないところはどれだけ急成長してても、実はあまりポジションに就くチャンスは無かったりします。
※小さい会社ではなく、それなりの規模の会社(メガベンチャーとか)で、
新規事業に積極的なところもあるかと思いますが、
既に年商数百億~とそれなりの規模の会社のため、新規事業もそれなりの規模のものでないと、新しくコストをかけてまで立ち上げる合理性に欠け、
そんな規模感のある新規事業なんてそんなに無いと思うので、
実際なかなか新規事業立ち上げれないよね、
というのは実情としてあるかなと思います。
判断力とは?
ちなみに、判断力に関して定義を行っておく方が分かりやすいかなと思いますが、
判断力とは、リスク/リターンを適切に見積もって方向性を決める能力だと思っていて、
以下の3つを精度高く適切に設定し見積もることが出来るかどうかが、つまり判断力の良し悪しであると考えています。
この3つを精度高く見積もることが出来て初めてマネージャーと呼べ、
精度が低い場合は、未熟なマネージャーと言えるかもしれません。
1.リスク/リターンにおける事象の洗い出し
2.事象が発生した時の影響度
3.事象が発生する確率
順に説明していきますと、判断を行うということは、常に複数の選択肢(やる/やらないというものも含めて)があるわけですが、
まずは、各選択肢を選んだ場合に、リスクもしくはリターンとして挙げられる事象は何か?
という項目をモレなくダブリなくきれいに洗い出すことが出来る力が1番目の能力です。
次に、洗い出した事象の影響度を1つ1つ考えます。
単にリターンの有無だけではなく、どの程度リターンやリスクがあるのか、という程度の問題を考えるわけです。
最後に、リターンやリスクの大小だけではなく、その発生確率もあわせてよく考え、精度高く読み切る必要があります。
例えば、簡単な例を以下に挙げておきます。
選択肢:A.東京に住む? B.住まない?
A.住むという選択肢をとった場合のリスク:大地震が起きて大変なことになるかも
リスクの影響度:非常に大きい
リスクの発生確率:30年以内に1度
ここまで整理した時に、では実際東京に住むことのリスクはどうなのか?
一方で、リスクに対するリターンとして、東京に住むリターンは何がどれくらいあって確率はどうなのか、それは当該リスクと見合っているのか?
と考え判断していくわけです。
もう少し突っ込むと、事象ごとの影響度を金額や感覚値でも数値化し、
その値と発生確率をかけ合わせることで、
その事象の期待値(上振れor下振れ)を見積ることが可能となり、
各事象ごとの見積もられた期待値をリスク/リターン別に集計しておくことで、
それを用いてリスク/リターンの期待値及び比率を得ることができます。
選択肢Aと選択肢Bのリスク/リターンの値や比率を比較すれば、
より合理的に複数の選択肢から判断を行うことが出来るというわけです。
※余談ですが、就職活動もこういった考え方は使えるかなと思います。
本当に様々な要因がある中で、何があってそれがどうなのかを数値化してみることで、
これまで思い込み、バイアスがかかった判断があったことに気づくこともあるかもしれません。
というわけで、諸々書いてきましたが、
上で述べたように、成長環境の3要素が揃っていると思われる、
そもそもポジションに早期に就ける確率が構造的に高いと言えそうな会社こそ、
最速最短で成長したい新入社員にとっての成長環境であると言える、と僕は思っています。
このような成長環境であるタイミングというのは、
実はほんの少しの期間しかなく、企業が成長するにつれ、
次第に成長環境でなくなってしまう、と僕は考えています。
2.外部環境変化を予測し、中長期で競争力のある知見、経験を得る
さて、1の時点で結構長くなってしまいましたが、次に2について書いていきます。
自分や会社を取り巻く外部環境(政治、経済、社会、テクノロジー等)が変化することで、
その変化にあわせて何を獲得しておけばよいかもあわせて変化するだろう、
という議論については、感覚的にお分かりいただける点かもしれませんね。
(例えば、今ITを使ってビジネスをすることは当たり前になってますが、
10年前に、ITスキルを早期に獲得した人とそうでない人では、
ビジネスとして考えることが出来る領域が全然違いますよね、という話)
では、今どういう外部環境の変化が起きようとしていて、
その潮流の中で何を得るべきか?という議論をする必要があります。
外部環境の変化は様々挙げられますが、
議論をシンプルにしたいので、社会への影響力を推し量る1つの指標である、
企業の時価総額から考えてみたいと思います。
今の世界の時価総額ランキングを見ると、ランキングトップ層は、
元々ベンチャー企業と呼ばれていたIT企業がその多くを占めていて、
既存の業種業界ではなく、「新しいテクノロジー」という外部環境変化をうまく捉え、
それを利用することで、非常に大きな影響力を持つに至った企業群で占められていることが分かります。
つまり、シンプルに考えて、テクノロジーの変化が、
最も市場に影響を与えるのではないか?ということを話そうとしています。
では、今最も社会に影響を与えそうなテクノロジーは何?と考えると、
僕は、人工知能という言葉しか浮かびません。
人工知能というテクノロジーの変化をよく考えてみる
2045年、シンギュラリティ(技術的特異点)という言葉が、
各所で言われるようになりましたが、
まだまだ学生の間では浸透していないように感じます。
シンギュラリティとは、
「100兆の極端に遅い結合(シナプス)しかない人間の脳の限界を、
人間と機械が統合された文明によって超越する瞬間の事」のこと。
※wikipediaからの拝借ですが、出典は、
「シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき」
https://www.amazon.co.jp/dp/B009QW63BI/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
です。
「シンギュラリティは近い」の著者であるレイ・カーツワイル(GoogleのAI開発の総指揮者)は、
2020年代終わりまでには、汎用人工知能(AGI)が人類史上初めて人間と並ぶと予測しており、
2029年とすると、たったあと12年後に、AGIができ、人間を越えていくことになると予測されています。
レイ・カーツワイルの、2020年代の変化の予測を以下に記載しておきます。
・人間の知能を模倣するために必要なハードウェアが、スーパーコンピューターでは10年以内に、パーソナル・コンピュータ程度のサイズの装置ではその次の10年以内に得られる。2020年代半ばまでに、人間の知能をモデル化した有効なソフトウェアが開発される。
・ハードとソフトの両方が人間の知能を完全に模倣できるようになれば、2020年代の終わりまでには、コンピューターがチューリングテストに合格できるようになり、コンピュータの知能が生物としての人間の知能と区別がつかなくなるまでになる。 ポスト・ヒューマン誕生 P.40、レイ・カーツワイル著、2005年
(分かりにくいかもしれませんが、2029年に1台のPCが1人の人間の脳を超える瞬間があり、
2045年のシンギュラリティは、人類の脳の総和を超える瞬間のようです)
※汎用人工知能(AGI)とは、「多様な問題領域において多角的な問題解決能力を自ら獲得し、設計時の想定を超えた問題を解決できるという人工知能」を指します。
汎用人工知能とよく対比される特化型人工知能(弱いAI)とは、「現状で実用的な個別の領域において知的に振る舞う」人工知能を指していて、今ニュースや新聞で見かける囲碁のAIや、画像認識するAIはこの特化型人工知能になります。
出典:「特定非営利活動法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ」
http://wba-initiative.org/wba/
肌感として、12年後にAGIが存在することは十分にあり得ると感じていて、
例えば擬似的に汎用的なタスクをこなせる人工知能が出来るのは、本当にすぐそこの未来だと思っています。
単に一例ですが、僕が考える擬似的な汎用人工知能について図にまとめてみました。
図を簡単に説明すると、
・今でいうGoogle playやApp storeのようなプラットフォームのAI版が出来るだろう
・プラットフォームの入り口は、Siri、Google Allow、Facebook Messanger、コミュニケーションロボット等、
音声もしくはテキストで入力をし、自動返答するものがインターフェースになる
(まさにこのインターフェースこそ「ひとまずウェブで検索」を代替することになると思うので、
IT大手が熾烈な開発競争を行っているのだと思っています。)
・インターフェースに対して、ユーザーが何かの要望を投げた時に、その音声もしくはテキストを解析し、
「要望ラベル」(グルメ情報が知りたい、食料品を買いたい)のようなものを瞬時に認識し、
プラットフォームに連なる、要望ラベルと一致したラベル(グルメ情報レコメンドAI、食料品レコメンドAI)を持つ、
弱いAI(特化型AI)にタスクを割り振る
・当該弱いAIは、そのアルゴリズムを用いて、要望(及び顧客セグメント(属性や志向性))にマッチした返答を、
インターフェース側に返し、それをユーザーに返す
という流れになります。
このプラットフォーム構想は既存の技術で十分に実現可能であり、
今後より一層広がる特化型AI開発競争によって、
より深みがあって幅のある汎用AIプラットフォームになり、
様々なタスクをこなすようなことも出来るかもしれません。
このようなプラットフォームの考え方は、
ウェブで完結する消費者向けだけではなく、
企業向けの業務ニーズや、リアルでの消費者向けのAIにも適用がされていくかもしれませんね。
このプラットフォームという考えはあくまで一案ではありますが、
人工知能がただのブームではなく、現実に企業や消費者の生活を変えていく可能性について、
少しはイメージを持ってもらえるかもしれません。
汎用人工知能(AGI)完成以降の未来
さて、すぐそこの未来を考えただけでも、既に若干SF感がありますが、
12年後以降はシンギュラリティに向かって、
人類の生活、生き方が加速度的に変わると予想されています。
シンギュラリティ後の未来は、書籍を読んでいただいたり、
各者のブログを読んでいただければよくお分かりいただけると思うので、ここでは割愛します。
「シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき」
https://www.amazon.co.jp/dp/B009QW63BI/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
技術的特異点(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E7%89%B9%E7%95%B0%E7%82%B9
イケダハヤトさんが「シンギュラリティは近い」をまとめられています。
http://www.ikedahayato.com/index.php/archives/27729
さて、話が大きく膨らみましたが、
このシンギュラリティという言説をどこまで理解し、
そのための行動を起こすかは、人にもよるかと思いますが、
今後、好むか好まざるかに関わらずAIというテクノロジーは企業や生活に急速に導入がされていくと予想されます。
今後のキャリアを考える上で、最も大きな外部環境変化だと思えるAIというテクノロジーを理解し、
利用方法やビジネス化の方法を自分に取り込まないということは、
リスク/リターンの比率から考えて、リスクの比重が非常に高いと言えるのではないでしょうか。
文系総合職にとっての人工知能
「人工知能が来そう、何か触れておかないとやばいかも?」と、もしかしたら思っていただいた人がいるかもしれませんが、「自分は文系だし、数学とかプログラミングのこと全然分からないのでどう関係していったらよいのか分からない。。。」という感想をお持ちかもしれません。
でも安心してください。
文系総合職が数学やプログラミングをがっつり勉強せずとも、ビジネスをする上で人工知能に関した知見を蓄積し、それを利用していくことは十分に可能だと思います。
文系総合職が獲得すべきAIの知見/経験
社内に技術者がいることはもちろん前提になりますが、
・どういう分析アルゴリズムの種類があって、そのアルゴリズムがどういう処理が得意なのか?を知る(アルゴリズムは、ディープラーニングだけではない。自分でデータサイエンティストのように操作出来るまでのプログラミングや統計のスキルは不要。)
・そのアルゴリズムに、どういうデータを投入すれば(どういう学習のさせ方をすれば)賢くなるかを理解しておく
・(上記を踏まえて)自社の業務プロセスや、自社で新しいサービスを作る時に、何が人工知能化するのに向いていて何が向いていないかを、データの質や量から判断できるようになる(今の人工知能は万能じゃないし、人間ルールでシステム化した方が遥かに安く確実に作れる場合も多数あるので、そのジャッジが出来るように)
といった点が考えられます。
どういう職場ならそれが得れるの?
これから色んな会社にAIが導入されていくのでどこでもいいんじゃない?と思われるかもしれません。
しかし、実際のところ導入される側の会社に所属する限り、その担当者(情報システム部門とか)でなければAI導入におけるディスカッションに参加が難しいと思われ、結果として上記に挙げた知見を獲得するのは難しいかと思います。
従って、
・人工知能、機械学習を顧客に導入、提供をしていく会社であること
・但し、人工知能機能が付与されているプロダクトを売る、というだけではなかなか上記の知見を得られないかと思うので、直接的に機械学習に関して顧客とディスカッションができる環境であること
シンプルですが、このような環境が良いのでは?と思っています。
以上、長くなりましたが、就活生の皆様の参考になれば幸いです!